電子基板の実装工程では、はんだフィレットの形状やコネクタ端子の高さ、BGAボールの共面性など、わずかな形状差が接続不良や実装不良につながることがあります。こうした高さ・段差・体積などを非接触で測定する方法として活用されているのが3Dセンサーです。
3Dセンサーを使用すれば、2D画像だけでは把握しにくい高さ方向の情報を取得し、はんだの盛り量や端子高さのばらつき、リード浮きなどを数値として評価できます。また、インラインへ組み込むことで、電子基板やコネクタの全数検査に活用することも可能です。
一方、電子基板には光沢のあるはんだや微細な端子、高さの異なる部品などが混在します。そのため、必要な測定精度だけでなく、視野、XY分解能、Z方向の測定レンジ、光沢面への対応力などを踏まえて測定方式を選定することが重要です。
ここでは、電子基板のはんだ検査やコネクタ端子の高さ・共面性測定を行う際の3Dセンサーの選び方について解説します。
電子基板のはんだ検査・
端子測定で確認できる項目
3Dセンサーでは、対象物の表面形状を高さ情報として取得できるため、単純な部品の有無だけでなく、はんだの高さや体積、端子の位置関係などを測定できます。
| 測定対象 | 主な測定項目 | 必要な測定性能の考え方 |
|---|---|---|
| はんだフィレットの形状 | はんだの高さ、幅、体積、傾斜、盛り上がり方などを測定し、はんだ量の不足・過多や形状異常を判定します。 | フィレットの最小形状を捉えられるXY分解能と、高さ差を安定して測定できるZ分解能が必要です。光沢面への対応力も重要になります。 |
| コネクタ端子の コプラナリティ(共面性) |
複数端子の先端高さを測定し、基準面から最も高い端子と低い端子の差などから共面性を評価します。 | 端子ピッチや端子幅より十分細かいXY測定点間隔と、許容する高さばらつきに対して十分なZ繰返し精度が必要です。 |
| リード浮き・曲がり | リード先端や接合部の高さ、傾き、位置ずれを取得し、浮きや曲がりを判定します。 | 細いリードを個別に識別できる横方向の分解能と、基板面からの高さ差を安定して取得できる性能が必要です。 |
| BGAボールの 高さ・平面度 |
各はんだボールの頂点高さ、直径、位置、高さのばらつきなどを測定し、コプラナリティを評価します。 | 微小なボールを分離して測定できるXY分解能と、ボール高さのばらつきを捉えられるZ分解能が重要です。 |
| 接着剤・封止材の 塗布量 |
塗布された材料の高さ、幅、断面積、体積、位置、連続性などを測定します。 | ビード形状全体を測定できる視野とZレンジに加え、ライン速度に対応する測定速度が必要です。 |
例えばLMI Technologiesでは、3Dセンサーを用いた電子部品向け用途として、はんだペーストの高さ・位置・被覆状態の検査や、コネクタピンの高さ・コプラナリティ検査を紹介しています。また、接着剤では幅・高さ・位置・連続性・体積などの3D形状情報を取得できます。:chatgpt-content-reference{index="1"}
コネクタ端子の共面性測定については、以下のページでも詳しく解説しています。
3Dセンサーの視野(FOV)と
分解能の関係
電子基板の3D検査で重要になるのが、センサーの視野(FOV:Field of View)と分解能のバランスです。
一般的に、同じ画素数や測定点数のセンサーであれば、広い範囲を一度に測定するほど、1点あたりがカバーする範囲は大きくなり、微細形状を識別する能力は低下します。
コネクタ単位で測定する場合
コネクタ端子の高さやコプラナリティを測定する場合は、コネクタ周辺だけに視野を絞ることで、微細な端子を高密度に測定しやすくなります。
例えばSICKが公開しているRanger3の電子部品向けピン検査例では、XY方向10μm、Z方向1μmの分解能で、端子の有無・共面性・位置合わせを検査する構成が示されています。:chatgpt-content-reference{index="2"}
ただし、この数値がすべてのコネクタ検査で必要という意味ではありません。端子幅、ピッチ、許容する高さ差から必要性能を決定します。
基板全体を測定する場合
一方、大型基板全体の反りや実装部品の高さを一度に測定したい場合は、より広いFOVが必要です。
広視野モデルを選ぶ方法のほか、センサーや基板を移動させて複数エリアを測定し、データをつなぎ合わせる方法もあります。ただし、測定範囲を増やすほど測定時間やデータ量も増えるため、インライン検査ではタクトタイムとのバランスが重要です。
また、基板自体が反っている場合は、部品高さだけでなく基準面も変化します。基板面を取得して補正したうえで各端子や部品の高さを評価できるかも確認しましょう。
パッケージ基板の3D検査については、以下のページも参考にしてください。
はんだ検査・コプラナリティ測定に
適した測定方式
電子基板を3D測定する方法には複数の方式があります。それぞれ、測定できる高さ範囲、分解能、光沢面への対応力、測定速度などが異なります。
| 測定方式 | 特徴 | 適した測定対象・用途 |
|---|---|---|
| 白色干渉法 | 白色光を基準面と測定面へ照射し、反射光の干渉を利用して高さを求めます。非常に高い高さ方向分解能を得やすく、平滑面や反射面の微細形状測定に適しています。一方、振動の影響を受けやすい場合があります。 | 微細なはんだ表面形状、平坦度、表面粗さ、微小段差など。高速ラインより高精度なオフライン評価に向く場合があります。 |
| 共焦点方式 | 焦点が合った波長や光だけを検出して距離を求めます。微小スポットによる高精度測定ができ、光沢金属など表面特性が変化する対象にも対応しやすい方式です。 | 端子高さ、微細段差、コプラナリティ、半導体・電子部品の高精度形状測定など。 |
| 光切断法 | レーザーラインを対象物へ照射し、変形したラインをカメラで撮影して断面形状を取得します。対象物やセンサーを移動させることで3D形状を生成でき、高速なインライン検査に適しています。 | はんだペースト、端子高さ、リード、基板反り、接着剤などのインライン検査。 |
| 縞投影法 | 複数の縞パターンを対象物へ投影し、その変形から面全体の高さを取得します。停止した対象物を面で高速に取得しやすく、一度に多数の端子や部品を測定できます。 | コネクタ端子、実装部品、はんだ、基板上の広範囲な3D外観検査など。 |
白色干渉法
白色干渉法は、非常に細かな表面の凹凸を測定したい場合に適しています。KEYENCEでは白色干渉方式について、白色光の短いコヒーレンス長を利用し、干渉強度のピークから表面高さを取得する方式として説明しています。
ナノメートル~マイクロメートル領域の表面測定に利用される一方、高精度測定では振動対策が必要になる場合があります。:chatgpt-content-reference{index="3"}
共焦点方式
共焦点方式は、微細な電子部品や光沢面の高精度測定に適した方式です。
Micro-Epsilonでは、共焦点センサーについて1nm未満の分解能を持つ製品や、光沢金属・ガラスなど幅広い表面に対応する製品を展開しています。また、微細構造を捉えるため3μm未満のスポット径を持つ製品もあります。:chatgpt-content-reference{index="4"}
さらに2026年に発表されたライン共焦点センサーでは、1プロファイル2,624点、Z軸分解能0.2μmとして、半導体・電子部品などの微細形状測定への用途が示されています。:chatgpt-content-reference{index="5"}
光切断法
光切断法は、レーザーラインによって対象物の断面形状を取得する方式です。センサーまたはワークを移動させることで連続した3Dデータを生成できるため、コンベア上の基板を停止させずに測定する用途にも適しています。
KEYENCEでは、レーザープロファイラを利用した電子部品用途として、PCBの反り、基板上のはんだ、端子のコプラナリティなどの全数検査を紹介しています。:chatgpt-content-reference{index="6"}
縞投影法
縞投影法は、対象物へ複数方向からパターン光を投影し、面全体の高さを取得する方法です。
対象を停止させて一度に広い範囲を取得する用途と相性が良く、多数のコネクタピンや実装部品をまとめて測定する場合などに利用できます。
例えばKEYENCEの3Dカメラでは、複数方向から投影した光を利用し、電子部品やはんだの高さ・体積・位置測定、コネクタピンの共面性・ピッチ・位置測定を行う用途が紹介されています。:chatgpt-content-reference{index="7"}
電子基板の3D検査で
注意したいこと
はんだの光沢による正反射
はんだ表面は光沢が強く、レーザーや投影光が特定方向へ強く反射することがあります。この正反射によって受光素子が飽和したり、逆に反射光がセンサーへ戻らなかったりすると、3Dデータの一部が欠落する可能性があります。
特に曲面状のはんだフィレットは場所によって表面角度が大きく変わるため、同じはんだ内でも受光量に差が生じます。
対策としては、光沢面に対応した共焦点方式や、複数方向から投光できる3Dカメラ、HDR・露光制御機能を備えたセンサーなどを検討します。
LMI Technologiesでは、短波長の青色レーザーによって研磨金属などの高光沢面から高品質な3Dデータを取得する構成も紹介しています。:chatgpt-content-reference{index="8"}
鏡面・光沢物体を3D測定する際の考え方については、以下のページも参考にしてください。
BGAなど、部品の下に
隠れた接合部
光学式の3Dセンサーは、基本的にセンサーから見えている表面の形状を測定します。
そのため、BGAを基板へ実装した後のはんだ接合部のように、パッケージ本体の下へ完全に隠れている部分を上方から直接3D測定することはできません。
3Dセンサーが有効なのは、実装前のBGAボール高さ・位置・共面性の検査や、外部から見える部品高さ・実装状態などです。
実装後のBGA内部接合部にボイドやブリッジ、未接合などがないか確認する場合は、X線検査など別の検査方式を検討する必要があります。
実装前のBGAに対する3D検査については、以下のページで詳しく解説しています。
リードフレームの高さや変形を確認したい場合は、以下も参考にしてください。
はんだ検査に適した3Dセンサーを
選ぶ7つのポイント
電子基板の3D検査では、単純に「最も分解能が高いセンサー」を選べばよいわけではありません。端子サイズや公差、視野、ライン速度などを総合的に確認する必要があります。
| 確認項目 | 確認したいポイント |
|---|---|
| Z分解能 (高さ分解能) |
端子高さ、はんだ高さ、リード浮きなど、判定したい最小の高さ差を捉えられるか確認します。対象の許容公差より十分細かな高さ変化を取得できる性能が必要です。 |
| Z軸繰返し精度 | 同じ対象を繰り返し測定した際の高さ値のばらつきを確認します。公差が小さいコプラナリティ検査では、分解能だけでなく繰返し精度が重要です。 |
| 視野 (FOV) |
コネクタ1個を測定するのか、複数コネクタや基板全体を測定するのかによって必要な視野が変わります。広いFOVと微細な分解能のバランスを確認します。 |
| XY分解能・ 測定点間隔 |
細い端子や微小なはんだボールを個別に識別できるか確認します。端子ピッチだけでなく、実際に測定したい最小形状を基準に選定します。 |
| 測定レンジ (Z方向) |
基板の反り、コネクタ高さ、実装部品高さなどを含めて測定範囲内に収まるか確認します。高い部品と低い端子が混在する場合は特に重要です。 |
| タクトタイム | 1枚の基板を測定・判定するために必要な時間が製造ラインの処理能力に適合するか確認します。複数FOVを走査する場合は、移動時間も含めて検討します。 |
| 光沢面への対応 | はんだや金属端子による正反射でデータ欠損が生じないか確認します。測定方式、投光方向、HDR、露光制御、青色レーザーなどの対応機能を比較します。 |
SICKが公開している電子部品用途の例では、BGAコプラナリティ検査でXY方向5μm・Z方向0.5μm、コネクタピン検査でXY方向10μm・Z方向1μmという構成が示されています。BGAでは高さ30~600μmのはんだボールを対象とした例もあります。:chatgpt-content-reference{index="9"}
一方、KEYENCEの3Dカメラでは、電子部品やコネクタを対象として1μmの繰返し精度を持つインライン検査システムも紹介されています。:chatgpt-content-reference{index="10"}
これらはあくまで製品・用途例であり、必要性能は端子ピッチや公差によって異なります。「カタログ上の最高精度」ではなく、実ワークを測定した際に設定した公差を安定して判定できるかを確認することが重要です。
寸法計測向けの3Dセンサーを比較したい場合は、以下のページも参考にしてください。
3Dセンサー導入前にメーカー・
販売代理店へ確認すべき情報
電子基板のはんだやコネクタ端子を測定する場合は、「コネクタの高さを測りたい」といった用途だけでなく、端子サイズや公差、基板全体の条件を具体的に伝えることが重要です。
メーカーや販売代理店へ相談する際は、少なくとも以下の情報を整理しておきましょう。
- 測定対象:コネクタ型番、端子ピッチ、端子幅、端子本数、BGAサイズなど
- 判定したい項目と許容公差:端子高さ、コプラナリティ、はんだ高さ・体積、リード浮きなど
- 測定範囲:コネクタ単位、部品単位、基板全体など
- 基板サイズと想定される反り量
- 1枚あたりの許容測定時間
- インライン全数検査か、オフラインでの抜き取り検査か
- 既存の外観検査装置(AOI)との役割分担
さらに、端子やはんだの表面状態、基板上の最大部品高さ、ワークの位置決め精度、複数品種を同一ラインで測定するかなども伝えておくと、より適切なセンサーを選定しやすくなります。
既存AOIを使用している場合は、2Dで傷・印字・部品有無などを確認し、3Dセンサーでは高さ・体積・共面性を測定するなど、それぞれの役割を整理するとよいでしょう。
はんだ付け工程への3Dマシンビジョン活用については、以下のページでも解説しています。
よくある質問
電子基板のはんだ検査に使える
3Dセンサーはありますか?
あります。レーザープロファイラや3Dカメラなどを使用し、はんだの高さ、幅、体積、位置などを測定できます。
例えばLMI Technologiesでは、PCB上のはんだペーストについて高さ・位置・被覆状態を3D測定する用途を公開しています。また、KEYENCEも電子基板上のはんだについて高さ・体積・位置を3Dで測定するインライン用途を紹介しています。:chatgpt-content-reference{index="11"}
コネクタ端子のコプラナリティは
非接触で測定できますか?
できます。3Dセンサーで各端子の先端高さを非接触で取得し、複数端子から基準面を算出することで、各端子の高さ偏差や最大値・最小値の差を評価できます。
LMI Technologiesではコネクタピンの存在・位置・高さ・コプラナリティ検査を、Micro-EpsilonでもICピンの共面性測定を電子部品向け用途として紹介しています。:chatgpt-content-reference{index="12"}
はんだの光沢によって正反射が起きても
3D測定できますか?
対応できるセンサーがありますが、測定方式や表面形状によって結果は異なります。
はんだ表面は曲面かつ高反射のため、レーザー光がセンサーへ戻らずデータが欠落したり、強い正反射によって受光部が飽和したりする場合があります。
共焦点方式、複数方向から光を投影する3Dカメラ、青色レーザー、HDR・露光制御などが対策の候補です。実際のはんだ材質・形状で事前テストを行うことが重要です。
パッケージの下に隠れたBGAの接合部も
3Dセンサーで検査できますか?
実装後にパッケージの下へ完全に隠れたBGA接合部を、一般的な光学式3Dセンサーで上方から直接測定することはできません。
3Dセンサーは実装前のBGAボールについて、高さ、位置、直径、共面性などを測定する用途には適しています。SICKではBGAボールのコプラナリティと位置を同時に検査する電子部品向け用途を公開しています。:chatgpt-content-reference{index="13"}
実装後のBGA内部接合部を検査したい場合は、X線検査など、パッケージ内部を確認できる別の方式を検討する必要があります。
まとめ
3Dセンサーを活用すれば、電子基板のはんだフィレットの高さ・体積、コネクタ端子のコプラナリティ、リード浮き、BGAボール高さ、接着剤の塗布量などを非接触で数値化できます。
ただし、電子部品は非常に小さく、はんだや金属端子は光沢による正反射も発生します。そのため、Z分解能だけでなく、XY分解能、視野、繰返し精度、光沢面への対応力、タクトタイムを含めてセンサーを選定することが重要です。
また、白色干渉法、共焦点方式、光切断法、縞投影法にはそれぞれ特徴があります。微細形状を高精度に測定したいのか、広い基板を高速に全数検査したいのかによって適した方式は異なります。
測定対象の端子ピッチや公差、基板サイズ、反り量、許容タクトタイムなどをメーカーや販売代理店へ提示し、実際の基板や良品・不良品を用いた測定テストを行ったうえで選定しましょう。



