食品製造ラインでは、製品の高さや大きさ、盛り付け量などを一定に保つことが、品質の安定や歩留まりの改善につながります。しかし、パン、食肉、農産物、惣菜などは一つひとつ形状が異なるため、2Dカメラによる輪郭検査や重量計だけでは実際の立体形状を把握しにくい場合があります。
そこで活用できるのが、食品表面までの距離を測定し、高さ・形状・体積などを3次元データとして取得できる3Dセンサーです。コンベア上を流れる食品を非接触で測定できるため、盛り付け量の確認やサイズ選別、欠けの検出、切り分け位置の決定などに利用できます。
一方、食品は個体差が大きいうえ、油や水分による光沢、洗浄を伴う製造環境など、一般的な工業製品とは異なる条件があります。そのため、測定精度だけでなく、対象物の表面状態やライン速度、センサーの防水性・清掃性などを含めて選定することが重要です。
ここでは、食品の形状・高さ・体積をインラインで測定するための3Dセンサーの活用方法と、選定時に確認したいポイントについて解説します。
食品製造ラインで3Dセンサーを
活用できる場面
3Dセンサーでは、食品の色や模様だけではなく、対象物表面までの距離を取得できます。そのため、2D画像だけでは評価しにくい高さ、体積、凹凸などを利用した検査が可能です。
| 用途 | 主な測定・検査内容 | 3Dセンサーを使用するメリット |
|---|---|---|
| 盛り付け高さ・ 体積の判定 |
トレーやコンベア面を基準として食品の高さ分布を取得し、最大高さ、平均高さ、盛り付け体積などを測定します。 | 重量だけでは分からない盛り付け形状や偏りを確認できます。トレー内の一部だけが高い、片側へ偏っているといった状態も3D形状として評価できます。 |
| 等級仕分け・ サイズ選別 |
長さ、幅、高さ、体積、外形などから食品を分類します。 | 2Dカメラによる縦・横のサイズだけでなく、高さや体積を含めて選別できます。農産物や食肉など、形状に個体差がある食品にも活用できます。 |
| 形状不良・ 欠けの検出 |
基準となる形状と比較し、凹み、欠け、割れ、変形、厚み不足などを検出します。 | 色や模様の違いではなく立体形状から判定できるため、食品とコンベアの色が近い場合でも高さ情報を利用できます。 |
| 自動スライス・切り分けの 前段階での形状測定 |
食品全体の長さ、高さ、断面形状、体積などを取得し、切断位置や分割数の決定に利用します。 | 個体ごとに異なる形状を事前に把握できるため、同じ重量・体積になるよう切断位置を調整するなどの制御に活用できます。 |
例えば重量計では食品全体の重量は把握できますが、「どの位置にどれだけ盛り付けられているか」までは確認できません。2Dカメラでは食品の輪郭や色を取得できますが、基本的には高さ情報を直接取得できません。
3Dセンサーであれば、食品のXY方向の形状とZ方向の高さを組み合わせて評価できるため、サイズだけでなく体積や立体的な形状不良まで確認できます。
SICKでは食品の形状・サイズ・体積を3Dビジョンで測定し、不良品を工程の早い段階で排除する用途を紹介しています。また、食品の体積情報から均等なスライス位置を決める用途も3Dビジョンの代表例として挙げられています。
食品の盛り付け高さ・体積を
3Dセンサーで測定する方法
食品の盛り付け高さや体積を測定する場合は、コンベアやトレーなどの基準面と、食品表面の高さとの差を利用します。
基準面から食品表面までの
高さを求める
まず、食品が置かれていない状態のコンベア面やトレー底面の高さを基準として登録します。その後、食品が通過した際の3D形状を取得し、基準面との差を計算することで、各位置における食品の高さを求めます。
例えばトレーに盛り付けられた食品であれば、トレー部分を除外したうえで、食品だけの最大高さや平均高さなどを算出できます。
高さデータを積算して
体積を求める
3Dデータは細かな測定点ごとに高さを持っています。それぞれの測定点について基準面との差を求め、その面積と高さを積算することで食品全体の体積を算出できます。
レーザープロファイル方式では、食品がコンベア上を移動する間に断面形状を連続取得し、それらを搬送方向へつなげて3D形状を生成します。LMI TechnologiesのGocatorでも、取得した表面データから対象物の高さや体積を測定する機能が用意されています。
一方、ToF方式などの3Dカメラでは、面状の距離データを一度に取得し、対象物の体積やレベルを算出する用途があります。
食品によって基準面の
設定方法は変わる
常に同じトレーへ食品を盛り付ける場合は、トレー底面を基準にしやすくなります。一方、ベルトコンベアへ直接流れるパンや農産物などでは、ベルト面を基準として食品部分を切り出します。
食肉や魚、野菜などのように形状が大きく異なる食品では、「理想形状との差」を判定するより、長さ・幅・高さ・体積といった数値条件から良否や等級を判断するほうが適している場合もあります。
食品の3D検査で
注意したい3つのポイント
形状が一定ではない
食品への対応
工業部品とは異なり、農産物、食肉、魚、パンなどは一つひとつ形状が異なります。そのため、単一のマスター形状と完全一致するかどうかだけで良否判定すると、正常な個体差まで不良として判定してしまう可能性があります。
こうした食品では、基準面からの高さ、最大・最小サイズ、体積、面積など、許容範囲を持った特徴量で判定する方法が候補になります。
例えば農産物の選別では、長さ・幅・高さ・体積などからサイズ区分を決定したり、局所的に大きく欠けている部分だけを異常として判定したりできます。
SICKのTriSpector1000も、製品の形状・色・位置・高さが変化する対象を3D検査できる製品として、食品・包装分野で利用されています。
濡れた食品・光沢のある
表面への対応
肉や魚の表面、水滴が付着した野菜、ソースや油を含む食品などでは、表面に強い光沢が生じることがあります。
レーザーや投影光が鏡のように特定方向へ反射すると、センサーへ十分な光が戻らず3Dデータが欠落したり、逆に強い反射によって受光部が飽和したりする場合があります。
対策として、露光条件の調整、HDR機能、レーザー波長の選択、センサー角度の変更などを検討します。使用する食品によって表面状態は大きく異なるため、乾いたサンプルだけでなく、実際の製造状態に近い濡れ・油・ソース付きの状態で測定テストを行うことが重要です。
また、透明フィルム越しに食品を測定する場合は、フィルム表面からの反射や透過・屈折が影響するため、包装前に測定する方法も含めて検討します。
洗浄・サニタリー環境への対応
食品製造ラインでは、製造終了後などに水や洗浄剤を使用して設備を洗浄する場合があります。そのため、センサーを水がかかる場所へ設置する場合は、防水・防じん性能を示すIP等級を確認する必要があります。
ただし、IP67やIP69Kなどの保護等級だけで「食品製造ラインに適している」と判断することはできません。保護等級は筐体内部への水・粉じんの侵入に対する性能を示すものであり、衛生設計そのものを保証するものではないためです。
食品が露出しているエリアや頻繁に洗浄する場所では、以下についても確認しましょう。
- ステンレスなど腐食しにくい筐体材質か
- 食品残渣がたまりにくい凹凸の少ない形状か
- 使用する洗浄剤・消毒剤に耐えられるか
- コネクターやケーブルを含めて必要な防水性能があるか
- 高圧・高温洗浄を行う場合、その条件に対応しているか
SICKでは食品向けセンサーとして、IP69Kやステンレス筐体、洗浄剤への耐性を備えた製品を展開しています。また、食品の3D測定用途ではRuler3000などに、強力な洗浄へ対応するオプションのステンレスハウジングを用意しています。
食品のインライン検査に適した
3Dセンサーの測定方式
食品の3D測定には複数の方式があり、測定範囲や精度、ライン速度、対象物の表面状態などによって適した方式が異なります。
| 測定方式 | 特徴 | 食品製造ラインでの適した用途 |
|---|---|---|
| 光切断法 | レーザーラインを対象物へ照射し、その形状をカメラで撮影して断面形状を取得します。ワークを移動させながら断面を連続取得することで3D形状を生成でき、高速インライン測定に適しています。 | パン・菓子・食肉・農産物などの高さ、幅、体積、形状不良、サイズ選別など |
| 縞投影法 | 縞状のパターン光を対象物へ投影し、その変形から面全体の3D形状を取得します。一度に面として形状を捉えられる一方、対象の移動や強い外乱光の影響について確認が必要です。 | 停止または位置決めされた食品の形状・盛り付け状態・表面形状などの測定 |
| ToF方式 | 照射した光が対象物から戻るまでの時間から距離を求めます。比較的広い範囲を一度に取得でき、距離・レベル・体積などの測定に利用できます。 | 大きな食品や容器内の盛り付け量・充填状態・体積測定、搬送・ロボット用途など |
| ステレオビジョン | 異なる位置に配置した複数のカメラ画像から同じ特徴点を対応付け、視差を利用して距離を算出します。広い範囲の3D認識に対応しやすい一方、模様の少ない対象では安定した対応点の取得が難しい場合があります。 | 食品の位置・姿勢認識、ロボットピッキング、比較的大きな食品の形状認識など |
| 共焦点方式 | 焦点位置の異なる光を利用して対象物までの距離を高精度に測定します。非常に細かな高さ変化を測定できる一方、広い食品を高速に全面測定する用途では光切断法などと比べて構成が複雑になる場合があります。 | 食品そのものの大きな形状測定より、包装材・容器・コーティングなどの微細な厚み・高さ測定に適する場合がある |
高速コンベアでは
光切断法が候補
コンベア上を連続して流れる食品を測定する場合は、光切断法を用いたレーザープロファイルセンサーが候補になります。
食品がセンサー下を通過する間に断面を連続取得できるため、ラインを停止させずに3D形状を生成できます。SICKのTriSpector1000もレーザー三角測量によって移動物の高さプロファイルを取得し、食品の体積測定などに利用されています。
広範囲の体積や充填状態なら
ToF方式も候補
ToF方式は一度に面状の距離データを取得できるため、細かな表面形状よりも広い範囲の体積やレベルを測定したい場合に適しています。
ifmではToF方式の3Dセンサーを、パン、チーズ、パスタ、食肉製品などの製造工程における容器内の体積・充填状態管理へ利用できるとしています。
食品製造ラインに適した3Dセンサーを
選ぶ7つのポイント
食品向け3Dセンサーは、測定精度だけでなく、ライン環境への耐性や食品の表面状態まで含めて選定する必要があります。
| 確認項目 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 保護等級 (IP規格) |
水洗いや高圧洗浄など、実際の洗浄条件に適した保護等級を持つか確認します。センサー本体だけでなくコネクターやケーブルなども含めて確認が必要です。 |
| ハウジング材質 | ステンレスなど腐食しにくい材質か、使用する洗浄剤や消毒剤への耐性があるか確認します。食品が露出するエリアでは、汚れがたまりにくく清掃しやすい筐体形状も重要です。 |
| 視野幅 (X方向) |
コンベア幅や最大食品サイズをカバーできるか確認します。複数列で食品が流れる場合は、すべてのレーンを測定できる視野が必要です。 |
| プロファイル速度 | 光切断法を使用する場合、コンベア速度に対して十分な断面データを取得できるか確認します。搬送速度が速いほど、同じ測定点間隔を確保するには高いプロファイル速度が必要になります。 |
| エンコーダ入力・ 同期機能 |
コンベアの移動量と3Dデータを同期できるか確認します。搬送速度が変化するラインでは、正しい形状を再現するためにエンコーダ同期が有効です。 |
| レーザー波長・ 光沢面への対応 |
水分や油による光沢、濃色食品、反射率の異なる表面などを安定して測定できるか確認します。露光制御やHDRなどの機能も比較します。 |
| 単体での判定機能 | 高さ・幅・体積などの演算やOK・NG判定をセンサー内部で行えるか確認します。単体処理に対応していれば、外部PCを減らせる場合があります。 |
SICKのTriSpector1000は、3D形状の取得から画像処理までをセンサー内部で行えるスタンドアロン型で、色・位置・高さが変化する製品の3D検査に対応しています。IP67の筐体を備え、食品加工環境への使用も想定されています。
ただし、IP67だから水洗いエリアへ必ず設置できるとは限りません。高圧洗浄や薬品洗浄を行う場合は、それぞれの条件に対応した保護筐体などを含めてメーカーへ確認しましょう。
寸法計測向けの3Dセンサーを比較したい場合は、以下も参考にしてください。
3Dセンサーによる
食品の異物検査は可能?
3Dセンサーも食品の異物検査に活用できる場合があります。ただし、すべての異物を検出できるわけではありません。
表面の凹凸として現れる異物は
検出できる可能性がある
食品表面に異物が付着し、周囲より高く突き出している場合は、3D形状の異常として検出できる可能性があります。
例えば一定の厚みを持つ製品上に異物が載っている場合、基準となる食品表面から局所的に高くなった領域として検出できます。
また、異物そのものではなく、欠けや凹みなど食品表面の形状異常を3Dデータから検出する用途にも適しています。
内部に入り込んだ異物は
3Dセンサーでは確認できない
一般的な光学式3Dセンサーが測定するのは、センサーから見えている対象物の表面です。そのため、食品内部へ完全に入り込んだ異物を、表面形状だけから直接検出することはできません。
内部異物については、異物の材質や食品によってX線検査装置や金属検出機などを使い分けます。
| 検査方式 | 主に検出するもの |
|---|---|
| 3Dセンサー | 食品表面の凹凸、外形異常、表面から突出した異物など |
| 2Dカメラ | 色の異なる異物、汚れ、変色、表面外観など |
| 金属検出機 | 食品内部を含む金属異物 |
| X線検査装置 | 食品とのX線透過量に差がある内部異物など |
そのため、3DセンサーをX線検査装置や金属検出機の代替として考えるのではなく、形状検査・表面検査を担当する装置として役割分担することが重要です。
ライン上ですべての食品を3D検査する場合は、全数検査に必要な測定速度や処理能力についても確認しましょう。
3Dセンサー導入前にメーカー・
販売代理店へ確認すべき情報
食品向けの3Dセンサーを選定する場合は、「食品の高さを測りたい」といった用途だけでなく、実際のライン条件や食品の状態を具体的に伝えることが重要です。
メーカーや販売代理店へ相談する際は、少なくとも以下の情報を整理しておきましょう。
- 測定したい項目:高さ、体積、サイズ、形状不良、欠けなど
- コンベア幅と必要な測定範囲
- ラインの搬送速度と必要な測定精度
- 食品の種類・形状・表面状態:濡れ、油、光沢、色など
- 洗浄方法と必要な保護等級:水洗い、高圧洗浄、薬品洗浄など
- 品種切り替えの頻度や設定変更の方法
- 異物検査など、ほかの検査装置との役割分担
さらに、食品が単列か複数列か、製品同士が接触する可能性があるか、トレーの有無、測定時に包装済みかどうかなども伝えておくと、適した測定方式を選びやすくなります。
特に食品は同じ品種でも色・形・表面状態に個体差があるため、代表的な良品だけでなく、サイズ違いや濡れた状態、形状不良品など複数の実ワークを使って測定テストすることが重要です。
よくある質問
食品の形状や盛り付け高さ・体積を
インライン測定できる3Dセンサーはありますか?
あります。レーザープロファイル方式などを利用し、コンベア上を流れる食品の高さ・幅・長さ・体積などを測定できる3Dセンサーがあります。
SICKでは食品の形状・寸法・体積を高速工程上で3D測定する用途や、生地・完成品の体積を検査する用途を紹介しています。また、TriSpector1000では食品の体積測定を代表的な用途のひとつとしています。
3Dセンサーを食品の
異物検査に使用することはできますか?
食品表面に付着し、周囲とは異なる高さを持つ異物であれば、3D形状の変化として検出できる可能性があります。
一方、食品内部に完全に埋まった異物は、一般的な光学式3Dセンサーでは直接確認できません。内部異物はX線検査装置や金属検出機など、異物の種類に適した検査方式を併用する必要があります。
濡れた食品や光沢のある表面でも
3D測定できますか?
測定できる場合がありますが、対象物の表面状態やセンサーの測定原理によって難易度が変わります。
水滴、油、ソースなどによって強い正反射が生じると、3Dデータの一部が欠ける場合があります。露光制御やHDR機能、センサー角度などを調整し、実際の食品を用いた測定テストで確認することが重要です。
洗浄を行う食品製造ラインにも
3Dセンサーを設置できますか?
設置できる製品や構成があります。ただし、洗浄方法に適した防水性能や筐体が必要です。
例えば食品向けのセンサーには、ステンレス筐体や高いIP保護等級、洗浄剤への耐性を備えた製品があります。また、3Dセンサー向けにステンレス製保護ハウジングが用意されている場合もあります。
IP等級だけで判断せず、水圧、水温、洗浄剤、洗浄頻度、設置位置などをメーカーへ伝えて適合性を確認しましょう。
まとめ
3Dセンサーを活用すれば、食品製造ラインで盛り付け高さ・体積、サイズ、形状不良、欠けなどを非接触で測定し、等級仕分けや切り分け工程の自動化にも利用できます。
特に3Dセンサーは、2Dカメラでは直接取得できない高さ情報と、重量計では分からない形状分布を把握できることが特徴です。
一方、食品は個体ごとの形状差が大きく、水分や油による光沢もあります。また、製造ラインによっては頻繁な水洗いや薬品洗浄も行われるため、視野・測定速度だけでなく、光沢面への対応力や防水性能、筐体材質、洗浄耐性まで含めてセンサーを選定する必要があります。
測定したい食品、搬送速度、必要精度、食品の表面状態、洗浄条件などをメーカーや販売代理店へ伝え、実際の良品・不良品を使用した測定テストを行ったうえで導入を検討しましょう。



