物流センターや倉庫では、段ボールや梱包物のサイズを把握し、仕分けや保管、運賃計算、ロボットによる搬送などへ活用するために、荷物の「縦・横・高さ」を測定する3辺計測が行われています。
従来は作業者がメジャーなどを使って測定する方法もありますが、取り扱う荷物が多い現場では大きな負担になります。そこで活用できるのが、荷物の3次元形状を非接触で取得できる3Dセンサーです。
3Dセンサーをコンベア上に設置すれば、荷物を搬送しながら幅・長さ・高さを取得し、体積の計算や仕分け判定などに利用できます。ただし、物流用途では測定精度だけでなく、コンベアの搬送速度、最大荷物サイズ、荷姿、梱包材の色や表面状態などを考慮して製品を選ぶことが重要です。
ここでは、段ボールや荷物の3辺計測を自動化したい方に向けて、物流向け3Dセンサーの選び方を解説します。
3Dセンサーで測定できる
荷物の寸法・形状
3Dセンサーは対象物までの距離を多数の点として取得し、荷物の高さ情報を含んだ3Dデータを生成できます。単純な段ボールの寸法だけでなく、取得した3D形状からさまざまな情報を求めることが可能です。
荷物の3辺(縦・横・高さ)
3Dセンサーをコンベアの上方などに設置することで、搬送される段ボールや梱包物の長さ・幅・高さを非接触で測定できます。
荷物の大きさに応じた仕分け、保管場所の決定、配送区分の判定などに利用でき、人による採寸作業の省人化にもつながります。
荷物の体積・容積
取得した縦・横・高さの値から荷物の体積を算出できます。直方体の段ボールだけでなく、3D点群を利用して実際の荷姿に近い容積を評価できるシステムもあります。
荷物の容積データをWMSなどへ送信すれば、保管スペースの割り当てやトラックへの積載計画などにも活用できます。
荷崩れ・はみ出し
3Dセンサーでは荷物の外形を高さ情報として取得できるため、基準となる領域から荷物が飛び出していないかを確認できます。
例えばパレットの外周より荷物がはみ出している状態や、積み付けた段ボールの一部が傾いている状態などを検出し、後工程へ流れる前に異常を知らせる用途が考えられます。
パレット上の積付け状態
パレット全体を3D撮像することで、各荷物の位置や高さ、最上段の状態などを把握できます。これらの情報は荷崩れ検査だけでなく、ロボットによるデパレタイズにも利用できます。
コンテナ内の充填率
コンテナやカゴ台車、ボックスなどを上方から3D測定することで、内部がどの程度荷物で満たされているかを確認することも可能です。
空間内の高さ分布や占有状態から充填率を把握できれば、搬送タイミングの判断や積載効率の改善にも活用できます。
物流現場での3Dマシンビジョンの活用方法については、以下のページでも詳しく紹介しています。
用途別に必要な測定精度と
適した測定方式
物流現場で使用する3Dセンサーは、用途によって重視すべき性能が異なります。
例えば荷物を大まかなサイズ別に仕分ける用途と、ラベルを狙った位置へ貼り付ける用途では、必要となる位置精度は同じではありません。また、高速コンベア上で3辺計測を行う場合は、静止した荷物を測定する場合よりも測定速度が重要になります。
| 用途 | 要求精度の目安 | 適した測定方式 |
|---|---|---|
| ソーティング (仕分け先の判定) |
仕分け区分や荷物サイズによって異なる。サイズ・位置・向きを確実に識別できる精度を基準に選定 | ToF方式、3Dスナップショット方式、レーザープロファイル方式など |
| 自動ラベリング・ 貼付位置決め |
ラベルサイズや貼付可能領域によって異なる。荷物の位置・高さ・傾きを貼付装置が必要とする精度で取得できることが重要 | レーザープロファイル方式、3Dスナップショット方式など |
| 3辺計測・ 容積計算 |
用途によって異なる。物流向け製品の例では、2m/sの搬送時でも3次元方向で2.5mm超の解像度を持つ製品がある。取引・運賃算定用途では計量規格への適合も確認 | レーザープロファイル方式、ToF方式、3Dスナップショット方式など |
| コンテナ内の 充填率測定 |
充填率をどの単位で管理するかによって異なる。細かな外形測定より、広い範囲を一度に取得できることが重要 | ToF方式、3Dスナップショット方式など |
| デパレタイズの ロボット位置決め |
ロボットの把持精度、荷物サイズ、荷物同士の隙間によって異なる。箱の位置・高さ・姿勢を安定して取得できる性能が必要 | ToF方式、ステレオ方式、構造化光方式、3Dスナップショット方式など |
| 荷崩れ・ はみ出しの検出 |
許容するはみ出し量や荷物サイズによって異なる。設定した基準領域を超えた形状変化を検出できる精度が必要 | レーザープロファイル方式、ToF方式、3Dスナップショット方式など |
上記はあくまで選定時の考え方です。物流向け3Dセンサーには、荷物の3辺計測に特化した製品もあれば、ロボット位置決めや充填率測定を得意とする製品もあります。
例えばToF方式では、センサーから光を照射し、対象物から戻ってくるまでの時間を利用して距離を測定します。広い範囲を一度に3D撮像しやすいため、荷物の寸法計測や容積測定、デパレタイズなどにも利用されています。
ToF(Time-of-Flight)方式について
詳しく見る
寸法計測向けの3Dセンサーを比較したい場合は、以下のページも参考にしてください。
コンベア上での3辺計測は
搬送速度と分解能が重要
コンベア上を移動する荷物をレーザープロファイルセンサーで測定する場合、センサーは荷物の断面形状を繰り返し取得し、それらを搬送方向へつなぎ合わせて3D形状を生成します。
このとき重要になるのが、「コンベアの搬送速度」と「1秒間に取得できるプロファイル数」です。
搬送速度が速いほど測定点の間隔は広がる
搬送方向の測定間隔は、おおよそ以下の関係で考えることができます。
搬送方向の測定間隔 = 搬送速度 ÷ プロファイル取得速度
例えばコンベア速度が2m/s、プロファイル取得速度が800Hzの場合、1回のプロファイル取得中に荷物は約2.5mm移動します。そのため、搬送方向では約2.5mm間隔で断面データを取得する計算になります。
実際に物流向けとして提供されているGocator 2490では、2m/sのコンベア速度でも3次元方向で2.5mmを超える解像度で梱包物を測定できるとされています。
搬送速度だけを上げ、プロファイル取得速度が変わらなければ測定点同士の間隔は広くなります。小さな突起や細かな形状まで取得したい場合は、実際のライン速度で必要な測定間隔を確保できるかを確認しましょう。
エンコーダによる搬送量との同期も確認
コンベアは常に一定速度で動いているとは限りません。加減速が発生するラインでは、一定時間ごとに測定するだけでは3D形状が搬送方向へ伸びたり縮んだりする場合があります。
そこで、コンベアに取り付けたエンコーダから移動量を取得し、一定距離移動するごとにプロファイルを取得できるセンサーを使用すると、搬送速度が変化した場合でも測定データを同期しやすくなります。
物流向け3Dセンサーの選定で
確認すべき7つの項目
物流用途では、「3D測定ができる」というだけでは十分ではありません。コンベア幅や荷物高さ、搬送速度、梱包材の種類、システムとの接続方法まで含めて選定する必要があります。
| 確認項目 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 視野幅 (X方向) |
コンベア上を流れる最大荷物幅を一度に測定できるかを確認します。荷物がコンベア中央を通らない可能性も考慮し、位置ずれを含めた測定範囲を確保することが重要です。 |
| 測定レンジ (Z方向) |
最も低い荷物から最大荷物高さまで測定できるかを確認します。センサーの設置高さ、ワーキングディスタンス、最大荷物高さを合わせて検討します。 |
| プロファイル速度 | 高速コンベアでレーザープロファイル方式を使用する場合に重要です。搬送速度に対して十分なプロファイル数を取得でき、必要な搬送方向分解能を確保できるか確認します。 |
| エンコーダ入力 | コンベアの移動量と測定タイミングを同期できるか確認します。搬送速度が変化するラインでは、正しい3D形状を生成するための重要な機能です。 |
| 黒色・低反射材への対応 | 黒い段ボールやゴム、濃色の梱包材などは反射光量が少なくなる場合があります。低反射対象への測定性能や露光制御、レーザー出力などを確認します。 |
| 単体での判定機能 | 寸法計算や体積算出、しきい値判定などをセンサー内部で処理できるか確認します。センサー単体で処理できれば、外部PCや専用画像処理装置を減らせる場合があります。 |
| 上位システムとの連携 | Ethernet、デジタルI/O、PLC通信など必要なインターフェースを備えているか確認します。WMS、WCS、仕分け制御システムなどへ寸法・位置・判定結果を渡せる構成が必要です。 |
物流向けの3Dセンサーには、寸法・方向・位置を取得し、Ethernet経由で上位システムへデータを送信できる製品もあります。外部PCを追加せず、センサー内部で寸法計算を行える製品もあるため、システム全体の構成も比較しましょう。
物流現場で3Dセンサーを
使用する際の注意点
黒色・光沢のある梱包材
黒色の段ボールや梱包材は照射した光の反射量が少なくなり、センサーが距離情報を取得しにくくなることがあります。一方、光沢フィルムやテープは強い正反射が発生し、一部の測定点が欠けたり、誤った高さとして取得されたりする場合があります。
そのため、物流現場で多様な梱包物を扱う場合は、黒色・低反射・光沢対象を含む実際の荷物で事前テストを行うことが重要です。
ToF方式では対象物の色の影響を抑えた測定を特徴としている製品もあります。また、物流向けの寸法測定システムには、黒色・光沢・半透明などの測定が難しい対象に対応するための画像処理機能を備えたものもあります。
不定形な袋物・変形しやすい荷物
段ボールのような直方体は3辺を定義しやすい一方、袋物や柔らかい梱包物は搬送中に形状が変化します。
そのため「縦・横・高さ」をどのように定義するかをあらかじめ決める必要があります。例えば、取得した3D点群全体を囲む最小の直方体を求める方法や、荷物が占有する最大外形を寸法として扱う方法があります。
特に運賃算定や保管スペース計算へ利用する場合は、センサーの精度だけでなく、どのアルゴリズムで荷物の外形寸法を決定するかも確認しましょう。
荷物同士の間隔が狭い場合
荷物同士が接触していたり、間隔が極端に狭かったりすると、複数の荷物を1つの物体として認識してしまうことがあります。
3辺計測を安定させるには、センサーが個々の荷物を分離して認識できるだけの間隔を確保することが重要です。
必要な間隔は使用するセンサーや測定方式、荷物サイズによって異なります。例えばLMI TechnologiesのLegal for Trade仕様では、規定された条件として荷物同士を4インチ(約102mm)以上離すことが示されています。実際の導入では使用する製品の仕様を確認してください。
3Dセンサーで取得したサイズや位置情報を利用すれば、後段の仕分け設備へ荷物の情報を渡すこともできます。
3Dセンサー導入前にメーカー・
販売代理店へ確認すべき情報
物流向け3Dセンサーを選定する際は、「段ボールのサイズを測定したい」という情報だけでは十分ではありません。
同じ3辺計測でも、コンベア速度や荷物サイズ、梱包材の材質、必要精度によって適切なセンサーは変わります。メーカーや販売代理店へ相談する際は、少なくとも以下の条件を整理しておきましょう。
- 測定の目的:仕分け、容積計算、ラベリング、荷崩れ検出など
- 必要な測定精度・許容誤差
- コンベア幅・搬送速度・荷物同士の間隔
- 最大・最小の荷物サイズと荷姿
- 梱包材の色や表面状態:茶色段ボール、黒色、光沢フィルム、透明材など
- センサーを設置できる高さ・スペース
- 測定結果の連携先:WMS、WCS、PLC、仕分け制御盤など
これらに加えて、1時間あたりの処理個数、荷物の向きが一定かランダムか、複数の荷物が並列で流れる可能性があるかなども伝えておくと、実際のライン条件に合った製品を選定しやすくなります。
可能であれば、実際に流れている荷物を複数種類用意し、想定する搬送速度で測定テストを行うことをおすすめします。
よくある質問
段ボールや梱包物の高さ・寸法を
ライン上で測定できる3Dセンサーはありますか?
あります。コンベアの上方などに3Dセンサーを設置し、搬送される荷物の長さ・幅・高さを非接触で取得できる製品があります。取得した寸法から体積を算出したり、基準サイズを超えた荷物を判定したりすることも可能です。
物流現場で荷物の3辺を自動計測するには、
どのようなセンサーが適していますか?
高速コンベア上で連続して荷物を測定する場合は、レーザープロファイル方式などが候補になります。一方、広い範囲を一度に撮像して容積や荷姿を取得する用途では、ToF方式や3Dスナップショット方式も利用できます。
最適な方式は、荷物サイズ、必要精度、搬送速度、梱包材の状態などによって異なります。
コンベアの搬送速度を上げても
測定精度は保てますか?
センサーの測定速度に余裕があれば対応できます。ただし、レーザープロファイル方式では搬送速度を上げるほど搬送方向の測定点間隔が広がります。
必要な形状を取得できる測定間隔を確保できるプロファイル速度があるかを確認し、必要に応じてエンコーダと同期させます。製品選定時には、実際に使用する最大搬送速度をメーカーへ伝えておきましょう。
黒い段ボールや光沢フィルムで包まれた
荷物でも測定できますか?
測定できる製品はありますが、黒色・低反射材や光沢材は一般的な段ボールより測定条件が厳しくなります。
低反射材では受光量が不足しやすく、光沢材では正反射によって測定データが欠落することがあります。センサーごとに対応力が異なるため、実際に使用する黒色段ボールや光沢フィルムを使った事前テストで確認することが重要です。
まとめ
3Dセンサーを活用すれば、物流現場で段ボールや梱包物の縦・横・高さの3辺計測だけでなく、容積計算、荷崩れ・はみ出し検出、パレットの積付け状態確認、コンテナの充填率測定などを自動化できます。
ただし、最適なセンサーは用途によって異なります。高速コンベア上で3辺を細かく測定する場合は搬送速度とプロファイル速度、広範囲の容積や荷姿を取得する場合は視野や測定レンジなどが重要です。
また、黒い段ボール、光沢フィルム、不定形な袋物などは安定した測定が難しい場合があります。カタログ上の精度だけで選定せず、実際の荷物サイズ、搬送速度、表面状態、必要精度、上位システムとの接続条件をメーカーや販売代理店へ伝え、実機テストを行ったうえで導入を検討しましょう。



