高精度な位置決めとは、ワークや装置を狙った位置・姿勢へ、要求される公差の範囲内で正確に合わせ込むことです。組立、搬送、加工、成形など多くの工程で、位置決め精度がそのまま製品品質と歩留まりを左右します。
従来の産業用ロボットは、決められた動作を繰り返し行うことに特化しているため、ワークの位置ずれが発生すると対処できないという課題がありました。そこで用いられるのが、3Dセンサー(3Dマシンビジョン)でワークの位置・姿勢を計測し、ロボットや搬送装置へ補正値を渡す方法です。ここでは、位置決め精度を左右する要因と、3Dセンサーを活用した高精度位置決めの考え方を整理します。
高精度な位置決めが求められる場面
位置決めが問題になるのは、ワークが毎回まったく同じ位置に来るとは限らないためです。代表的な場面として次のようなものがあります。
- コンベアやパレットで搬送されたワークを、成形機・加工機へ正確に投入する
- ばら積みされた部品を把持し、決められた向きで治具へ置く
- 部品同士を嵌合・圧入する組立工程で、傾きを含めて位置を合わせる
- 溶接・塗布・レーザー加工などで、加工軌跡をワークの実位置に合わせる
- ロボットの設置ずれや経年変化で生じた座標のずれを補正する
いずれも、ティーチングした固定座標だけでは吸収できないばらつきを、どう補正するかが課題になります。
位置決め精度を左右する要因
位置決めの精度は、ロボット単体の性能だけで決まるわけではありません。ワーク側、計測側、周辺環境の条件が複合的に影響します。
キャリブレーションのずれ
産業用ロボットは、時間の経過とともにプログラムの座標位置からずれが発生します。このずれを調整する作業がキャリブレーションです。手動でのティーチングは時間がかかるうえ、操作者によって精度にばらつきが出やすく、設置ずれが起きた際の再調整も容易ではありません。ティーチング技術者の育成コストも運用上の課題になります。
計測側の条件
ビジョンでワークを捉える場合、部品精度のばらつき、照明条件の不安定さ、ワークの欠損や重なり、複雑な形状などが検出の安定性に影響します。またレンズの歪みは視野の端ほど大きくなるため、視野内のどの位置で計測するかによって誤差が変わることもあります。
ワークの材質・状態
反射率が低い黒色の素材、光沢のある金属面、透明体、変形しやすい柔らかい素材などは、そもそも安定して形状を取得すること自体が難しくなります。位置決め精度を議論する前に、対象を確実に計測できるかを確認する必要があります。
接触式・2Dカメラによる位置決めの限界
位置決めには、機械的な突き当てや治具による方法、接触式センサーによる検出、2Dカメラによる画像処理などが用いられてきました。しかし、対象や工程によっては次のような制約が出ます。
- 柔らかい素材や粘着性のある成形材料は、接触式センサーでは計測できない
- 治具による突き当ては段取り替えに手間がかかり、多品種少量生産に向かない
- 2Dカメラは平面上のX・Y位置と回転角は取得できるが、高さや傾きの情報が得られない
- ワークの高さが変わると2D画像上の見かけの大きさが変わり、位置の算出に誤差が生じる
つまり、ワークが立体的にばらつく工程では、Z方向と姿勢まで含めて計測できないと高精度な位置決めにつながりにくいといえます。
3Dセンサーを活用した高精度位置決めの仕組み
3Dセンサーを使った位置決めは、対象物の3次元形状を取得し、そこから算出した位置・姿勢をロボットや制御装置へ渡すという流れで行われます。センサーがワークの位置や角度を捉え、画像処理システムが識別・判断し、ロボットへ作業指示を出す構成です。
X・Y・Zと姿勢をまとめて取得できる
3Dセンサーは高さ情報を含む点群やプロファイルを取得できるため、平面上の位置だけでなく、傾きや回転を含む姿勢まで算出できます。積み上げられた部品や、高さがばらつくワークでも位置補正の基準を作りやすくなります。
非接触のため素材を選びにくい
接触式では計測できない柔らかい素材や粘着性のある材料でも、非接触であれば形状を取得できます。タイヤ製造のトレッド面の押し出し成形では、成形機に入る際に高精度な位置決めが要求されますが、コンベアで搬送される段階の成形材料は柔らかく粘着性があるため接触式センサーでは計測できません。こうした工程では、非接触で3次元プロファイルを取得できる3Dセンサーが選択肢になります。
低反射・大型ワークへの対応と装置構成
タイヤのように反射率の低いゴム素材で、サイズも大きい対象は、通常の3次元センサーでは一度に捉えることができない場合があります。高解像度と高輝度出力のレーザーを備えたセンサーであれば、1回のスキャンで3次元形状を取得できます。
また、複数箇所から撮像するために複数台の3次元センサーを制御する場合、通常は高度なソフトウェア開発が必要となり、構成が複雑になりコストもかかります。センサー側で位置決めシステムの制御まで行える製品や、専門知識がなくても複数台接続の3次元検査装置を構成できる製品を選べば、装置全体の構成をシンプルに保ちながら位置決め精度を確保しやすくなります。
キャリブレーションの負荷を下げる
3Dビジョンとロボットを連携させる際は、センサー座標系とロボット座標系を対応づけるキャリブレーションが不可欠です。近年は、手動での試行錯誤を必要とせず、簡単な操作でキャリブレーションを完了できる機能を備えたシステムもあり、立ち上げ工数と作業者によるばらつきの低減につながります。
位置決めに使われる3Dセンサーの方式
3Dセンサーにはいくつかの計測方式があり、視野の広さ、取得速度、精度、対象物との相性が異なります。位置決め用途では「どの程度の範囲を、どの速度で、どの精度で捉えたいか」によって適した方式が変わります。
| 方式 | 特徴と位置決め用途での向き・不向き |
|---|---|
| 光切断法 | レーザーラインで断面形状を取得する。搬送しながらスキャンする用途や、エッジ位置の検出に向く。 |
| 縞投影 | パターン光を投影して面全体の3D形状を取得する。静止したワークの位置・姿勢認識に向く。 |
| ステレオビジョン | 複数カメラの視差から距離を求める。比較的広い範囲を捉えやすいが、模様の少ない面では精度が出にくいことがある。 |
| ToF | 光の飛行時間から距離を測る。広範囲・高速に距離情報を得やすい一方、微細な位置決めには分解能が不足する場合がある。 |
ミリ単位の大まかな位置補正と、数十μm単位の精密な位置合わせでは、求められる方式もセンサーのグレードも変わります。工程で必要な公差を先に決めてから方式を絞り込むことが、過剰仕様や精度不足を避けるポイントです。
位置決め用の3Dセンサーを選ぶポイント
位置決め用途では、測定精度だけでなく、工程条件やロボットとの連携まで含めて検討することが重要です。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 必要精度 | 工程で許容される位置・角度の公差を明確にし、センサーの分解能・繰返精度がそれに見合うかを確認する。 |
| 視野と測定範囲 | ワーク全体を1回で捉えられるか。大型ワークでは複数台構成や広視野モデルの検討が必要になる。 |
| ワークの表面・材質 | 低反射の黒色、光沢面、柔らかい素材など、対象を安定して撮像できる方式かを確認する。 |
| タクトタイム | 撮像から位置算出、ロボットへの出力までを工程の所要時間内に収められるか。 |
| 制御・連携 | ロボットやPLCとの通信、センサー内での処理可否、複数台構成時の同期・キャリブレーションのしやすさ。 |
高精度をうたう製品でも、タクトタイムに収まらなければラインには組み込めません。精度・視野・速度・連携のしやすさのバランスを見ながら選定することが大切です。
まとめ
高精度な位置決めを実現するには、ロボット単体の性能だけでなく、キャリブレーション、計測条件、ワークの材質や状態まで含めて考える必要があります。ティーチングした固定座標だけではワークのばらつきを吸収できず、位置ずれがそのまま不良につながります。
接触式センサーや治具、2Dカメラによる位置決めには、素材や高さ方向の情報という制約があります。3Dセンサーであれば、非接触でX・Y・Zと姿勢をまとめて取得でき、柔らかい素材や低反射の大型ワークにも対応しやすくなります。
選定にあたっては、必要精度、視野・測定範囲、ワークの表面状態、タクトタイム、ロボット・PLCとの連携条件を整理し、実際のワークで評価したうえで判断することが重要です。
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