半導体製造では、ウェハの反りや表面状態、バンプ高さ、パッケージ基板の段差など、わずかな形状変化が後工程の品質や歩留まりに影響することがあります。こうした微細な3D形状を非接触で捉えるために活用されているのが、共焦点方式や白色干渉方式、レーザープロファイル方式などの3Dセンサーです。
ただし、クリーンルーム内へ3Dセンサーを導入する場合は、測定精度だけで製品を選ぶことはできません。センサー本体からの発塵やアウトガス、設置スペース、気流への影響なども含め、使用するクリーンルームと製造工程に適合するかを確認する必要があります。
ここでは、クリーンルームでウェハや半導体パッケージの3D形状測定を行う際に確認したいセンサーの条件と、測定対象ごとに適した測定方式について解説します。
クリーンルームへの設置で
確認すべき5つの要件
クリーンルームでは空気中の粒子濃度が管理されているため、一般的な製造現場と同じ感覚で測定機器を持ち込むことはできません。センサー単体の測定性能に加えて、装置から発生する粒子や化学物質、清掃性などを確認することが重要です。
なお、「クリーンルーム対応」とされている製品でも、すべての清浄度クラスや半導体工程にそのまま使用できるとは限りません。使用するクリーンルームの管理基準と照らし合わせて確認しましょう。
| 確認項目 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 冷却方式・発塵対策 | センサーやコントローラーに冷却ファンが搭載されている場合、内部の粒子を気流とともに周囲へ排出する可能性があります。ファンレス構造や受動冷却が採用されているか、可動部の有無、メーカーが発塵量を評価しているかを確認します。 |
| アウトガス | 樹脂、接着剤、シール材、ケーブルなどから放出されるVOCなどがウェハ表面や製造設備へ付着すると、工程に影響する可能性があります。使用材料や低アウトガス仕様の有無、必要に応じてアウトガス評価データを確認します。 |
| 筐体の清拭性 | 定期的な清掃を想定し、凹凸や隙間が少ない形状か、筐体表面を拭き取りやすいかを確認します。使用予定の清掃剤やアルコールなどに対する表面処理・材質の耐性についても確認が必要です。 |
| 設置フットプリント | センサー本体の寸法だけでなく、ワークまでの測定距離、ケーブルの曲げ半径、コネクター、取付治具、コントローラーなどを含めた必要スペースを確認します。装置内へ組み込む場合は高さ方向の余裕も重要です。 |
| 気流への影響 | クリーンルームでは天井側から床側へ空気を流すダウンフローなどによって清浄度を維持している場合があります。大型の筐体や配線が気流を遮らないか、センサー周辺に滞留域が生じないかを設備設計とあわせて確認します。 |
「クリーンルーム対応」だけで判断しない
クリーンルームでは空中浮遊粒子だけでなく、工程によっては表面への粒子付着や化学汚染も問題になります。そのため、製品カタログに「クリーンルーム対応」と記載されている場合でも、どのような条件で評価されているのか、自社の設置環境と一致しているのかを確認することが重要です。
特に半導体製造では、接着剤などの有機材料を使用しない低アウトガス仕様や、センサーヘッド側に発熱源を持たない構造が用意されている製品もあります。クリーンルーム内の要求条件が厳しい場合は、標準モデルだけでなく専用仕様についてメーカーへ相談しましょう。
測定対象ごとの要求分解能と
適した測定方式
ウェハや半導体パッケージの3D測定では、測定する対象によって必要となる視野、Z方向の分解能、横方向の分解能が異なります。
例えばウェハ全体の反りを確認する場合と、数十~数百μm程度のバンプを一つずつ測定する場合では、適する光学方式やセンサー構成は同じではありません。以下に代表的な測定対象と選定時の目安をまとめました。
| 測定対象 | 要求分解能の目安 | 適した測定方式 |
|---|---|---|
| ウェハの反り・うねり | μmオーダーの高さ変化を捉えられる性能が一つの目安。必要精度はウェハ径や工程上の許容値によって異なる | 共焦点方式、分光干渉方式、白色干渉方式、デフレクトメトリ方式など |
| ウェハ・パッケージの表面粗さ | サブμm~nmオーダーまで評価する場合があり、対象とする粗さパラメータに合わせて選定。白色干渉方式ではサブナノメートル分解能を持つ製品もある | 白色干渉方式、レーザー共焦点方式など |
| バンプ・ボール高さ | 横方向は数μmオーダーが選択肢。メーカー公表例では約4μmの横分解能や、X方向2.5μm・Z方向繰り返し精度0.05μmのセンサーがある | 共焦点方式、ライン共焦点方式、白色干渉方式など |
| パッケージ基板の凹み・段差 | 対象となる最小段差や合否判定値に合わせて選定。一律の要求値はなく、μmオーダー以下の高さ変化を測定できる3Dセンサーもある | レーザープロファイル方式、共焦点方式、白色干渉方式など |
| ダイシング後の欠け・チッピング | 検出対象となる欠け・亀裂の大きさによって異なる。微細欠陥を検出する場合は、横方向の分解能やスポット径も重要 | 共焦点方式、ライン共焦点方式、3D+2D画像を取得できる光学方式など |
| 実装後の部品高さ・傾き | 部品の浮き・傾きに設定する許容差に合わせて選定。μmオーダーの3D測定に対応するインラインセンサーが使用されている | レーザープロファイル方式、3Dスナップショット方式、共焦点方式など |
表に示した数値は、すべての半導体工程に共通する要求仕様ではありません。実際には「何μm以上の変化を不良として判定したいのか」「どの範囲を何秒で測定するのか」といった条件から必要なセンサー性能を決めます。
ウェハの反りやうねりの測定方法については、以下のページでも詳しく解説しています。
また、半導体ウェハでは外観上の傷や異物などを同時に確認するケースもあります。ウェハ検査そのものについて確認したい場合は、以下も参考にしてください。
鏡面ウェハの3D形状測定で
注意したいこと
シリコンウェハをはじめとする鏡面性の高い対象物は、照射した光が特定方向へ強く反射するため、一般的なレーザー三角測量方式では受光量が不足したり、逆に反射光が飽和したりすることがあります。その結果、測定データの欠落や高さ値のばらつきにつながる可能性があります。
そのため鏡面ウェハでは、鏡面対象に対応した共焦点方式や分光干渉方式、白色干渉方式などを候補として検討します。実際に、ウェハのバンプ測定や高反射面の3D形状測定を用途としているセンサーもあります。
表面の反射率だけでなく傾斜角にも注意
ウェハ自体が平坦でも、バンプや段差、エッジ部分では反射光の方向が大きく変化します。そのため、センサーの測定可能角度や開口数、測定スポット径についても確認が必要です。
また、透明膜や多層膜が形成されているウェハでは、表面だけでなく内部の界面からも光が反射します。単純な「高さ測定」として選定するのではなく、対象の材質、膜構成、反射率までメーカーへ提示したうえで測定テストを行うことが重要です。
ウェハ全面測定と
サンプリング測定の違い
ウェハの3D形状を評価する方法は、大きく「全面測定」と「サンプリング測定」に分けられます。
| 全面測定 | サンプリング測定 | |
|---|---|---|
| 測定範囲 | ウェハ全体またはほぼ全面 | 指定した点・ライン・エリア |
| 得られる情報 | ウェハ全体の反り、局所的な変形、面内分布などを把握しやすい | 特定位置の高さ、厚さ、段差などを重点的に確認できる |
| データ量 | 多い | 比較的少ない |
| 測定時間 | 測定範囲が広いため長くなりやすい | 測定点を絞れるため短縮しやすい |
| 向いている用途 | 反り・うねり・平坦度・面内分布の把握 | 工程管理、特定箇所の高さ確認、異常位置の詳細測定 |
ウェハの反りや平坦度のようにウェハ全体の形状そのものが評価対象となる場合は、測定点を限定しすぎると局所的な変形を見落とす可能性があります。一方、工程の変動を監視するために特定ポイントだけを高速測定したい場合は、サンプリング測定のほうが効率的です。
全面測定を行う場合はセンサーの分解能だけでなく、視野幅、ステージの移動速度、スキャンレート、ウェハ径、データ処理時間まで含めてタクトタイムを確認しましょう。
3Dセンサー導入前に
確認すべき項目
3Dセンサーを選定する際は、「ウェハを測定したい」「バンプ高さを測りたい」といった用途だけを伝えるのではなく、実際のワークや製造条件を具体的に整理することが重要です。
同じバンプ測定でも、バンプの直径や高さ、材質、ピッチ、ウェハ表面の反射率、必要タクトによって適したセンサーは変わります。可能であれば実ワークを用いた事前テストを行い、測定データの欠落や繰り返し精度まで確認しましょう。
メーカー・販売代理店に
提示すべき情報
- 測定対象:ウェハ、ダイ、BGA、パッケージ基板など
- 測定したい項目:反り、平坦度、段差、バンプ高さ、粗さ、欠けなど
- ワークの材質:Si、SiC、GaN、ガラス、樹脂、金属など
- 表面状態:鏡面、光沢、粗面、透明、多層膜の有無
- ワークサイズ・ウェハ径
- 測定したい最小形状・最小欠陥サイズ
- 必要な測定精度・繰り返し精度
- 測定範囲・視野幅
- 全面測定かサンプリング測定か
- ライン速度・必要タクトタイム
- センサーとワークの設置可能距離
- 装置内の設置可能スペース
- クリーンルームの管理条件・要求清浄度
- 発塵・アウトガスに関する社内基準
- 使用する清掃剤・清拭方法
- 温度・湿度・振動などの使用環境
- 取得した3Dデータの保存・外部出力方法
- PLCや上位システムとの接続方法
特にクリーンルームへ組み込む場合は、測定性能と同時に「そのセンサーを製造装置内へ持ち込めるか」を確認することが重要です。センサーヘッドだけをクリーン環境へ配置し、コントローラーや発熱部をクリーンルーム外へ配置できる構成も含めて検討するとよいでしょう。
パッケージ基板の検査について詳しく確認したい場合は、以下のページも参考にしてください。
よくある質問
クリーンルームでは
ファンレスの3Dセンサーが必須ですか?
必ずしもファンレスでなければ使用できないわけではありません。ただし、ファンや可動部は発塵や気流への影響を確認するポイントになります。使用するクリーンルームの要求条件と、センサーの発塵評価、排気方向などを確認して判断してください。
鏡面ウェハはレーザー式の
3Dセンサーでは測定できませんか?
レーザーを使用するセンサーでも、測定原理によって鏡面への対応力は異なります。一般的な三角測量方式では正反射の影響を受ける場合がありますが、共焦点方式や干渉方式など、鏡面ウェハを対象とした測定方式もあります。実際のウェハで測定テストを行うことが重要です。
ウェハ全面を必ず
3D測定する必要がありますか?
測定目的によって異なります。ウェハ全体の反りやうねり、面内分布を把握したい場合は全面測定が適しています。一方、工程管理として特定位置の高さや厚さの変化を確認する場合は、サンプリング測定でも目的を達成できることがあります。必要な検査精度とタクトタイムのバランスから決定しましょう。
まとめ
クリーンルームでウェハや半導体パッケージの3D形状を測定する場合は、分解能や測定範囲だけでなく、発塵、アウトガス、清拭性、設置スペース、気流への影響まで含めてセンサーを選定することが重要です。
また、ウェハの反り、表面粗さ、バンプ高さ、ダイシング後の欠けなど、測定対象によって求められる性能や適した測定方式は異なります。特に鏡面ウェハは反射特性の影響を受けやすいため、共焦点方式や干渉方式などを含めて検討するとよいでしょう。
カタログ上の分解能だけで判断せず、実際のワーク、必要精度、測定範囲、タクトタイム、クリーンルームの条件をメーカーや販売代理店へ提示し、実機テストを行ったうえで導入することが大切です。



